来　歴

こころ あなたは決して 人間の作った柵の中に生きない いつも先まわりして 私の前方をふさいでしまう すばしこいけものに似ている 　何とかしてあなたを 　こちらの領分に追いこもうとするが 　いつのまにか境界の 　向こう側に出てしまって 　私の未来にみごとに君臨してみせるのだ あなたは決して 人間の通路をなぞって歩かない 毎日地平の方からやって来て 私の存在に小さな影を作る さびしい太陽かもしれない 　なんとかしてあなたの 　内部をのぞきたいのだが 　いつのまにか私の影に 　すっかりかさなってしまって 　光なのか影なのかもわからないのだ あなたは決して 人間のことばを借りて話さない やがてつまづいて 私のイメジの底に落ちこんでしまう 痛い傷あとにちがいない 　何とかしてあなたと 　世界をわけあいたいのだが 　いつのまにか 　心臓の裏の部分に隠れてしまって 　ことばなんかもうどんな役にも立たないのだ

魂の領分　目次